2014年5月9日金曜日

proper forcing 学習の記録 --資料紹介編 その2

1-1. Proper forcing / Uri Abraham (補足)

前回の補足です。当資料では projection の概念は2つ定義されていて、普通の projection と stronger version の projection が定義されています。しかし、当資料で単に projection と言ったときにそれが暗に stronger version の方であることを仮定しているような書き方が見受けられます。(そう仮定するという明示的な説明はありません。)

しかしながら、実のところ、この2つを厳密に区別して管理しなければならないかといえばそうでもないのです。
ZF ぐらい十分強い公理系のモデルに forcing を適用する場合には、いかなる forcing poset も完備ブール代数に稠密に埋め込めて、埋め込んだブール代数(完備化)と元の poset は forcing の意味において同じ(得られる強制拡大達が同じになる)という定理は良く知られています。(これについてはKunen 本等を参照してください。)

実は、Q と P が forcing poset であるとして Q から P に projection がある場合、Q の完備化 から P の完備化への strong projection が作れるのです。
また、P と Q を完備ブール代数としたとき、P から Q への complete embedding が存在することと Q から P への strong projection が同値になります。
(ここらへんのことを証明するには前回言及した分に加えて Kunen 本 VII 章演習問題 [C8] が多少は参考になると思います。)

つまり、結局 strong projection に関してだけ理論的な面倒を見ればとりあえず実用上は困らないということになるわけです。


2. Proper and Improper forcing / Saharon Shelah

proper forcing の生みの親である Shelah の本です。Abraham の proper forcing でも引用がなされているのでこの資料を手に取るのは必然かと思われます。
しかしこの本、その分厚さの割に索引が存在しません。


証明の筋道は参考になったりするのですが、書いてある通りの証明を再現しようとすると上手く行かないかもしれません。
そういうところは、「Shelah の言わんとするところが理解できれば良しとする」というスタンスで読むのもありだと思います。

必要でいろいろ参考にはなるんだけど、教科書的には扱いにくい資料、といった印象を受けた資料です。


3. Elementary submodels in infinite combinatorics / Lajos Soukup
http://www.math-inst.hu/pub/setop/otka61600/elementary_submodels.pdf

Abraham の資料に従って proper forcing を定義し、定理を証明していくには elementary submodel の概念を知らねばなりません。
しかし Kunen 本には elementary submodel を使った議論をフィーチャーしたセクションは存在しませんでした。(新版の Kunen 本:Set theory (2011) にはあります。)
なので、私がそうだったように「強制法を知っていても elementary submodel ってどんな風に使うのか知らない」という人も多いのではないでしょうか。

この資料はまさにそういった人向けの資料です。


4. Set theory / Jech

Kunen 本についで有名な本。なのではないでしょうか。
この本では proper forcing は stationary set の概念を用いた方法で定義されています。
(そもそも、Shelah 本でも proper forcing はこっちの定義で導入されているものでした。)
結局は、Abraham の section 2.3 でその定義が elementary submodel を使った定義と同値であることが証明されることになるのですが、Jech 本での議論もそれはそれで参考になります。
また、Axiom A の定義も Abraham の資料で導入されている定義と異なり、それらが同値な定義であることはそんなに難しくないので、良い演習問題となると思います。



とりあえずこれで予定していた資料紹介は終了です。
3番の資料以外は手に取る必然性のあるものばかりでしたね。

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