2014年5月3日土曜日

proper forcing 学習の記録 --資料紹介編 その1

近頃、私は proper forcing と呼ばれている強制法を習得すべく学習しているのですが、初っ端からいろんな壁にぶち当たりました。
そこで特に心に残った点についていろいろ記しておこうと思います。
今後 proper forcing を勉強し始める人の何かの役に立てば幸いであります。
(まあ、新発見的なことは多分発生しないので、使う資料の参考とかにしてもらえれば。)


・proper forcing を学ぶための良い資料
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何事も学び始めるには何か良い教科書が欲しいものです。
しかし、proper forcing の勉強には「これ一冊あれば十分!」と呼べるものは無いように思われます。
「いや、それ他の勉強でもそうだろ」と言われればそうなのですが、ここで私が比較対象に考えているのは集合論の入門書として呼び声の高い Kunen の Set Theory (1980) (以下、Kunen 本と呼ぶ)です。
そもそも、proper forcing 自体が強制法の発展的な話題であるので、それについての指南書は当然読者に必要な知識を仮定するでしょうし、入門書のように書かれることは期待するべくもありません。
とはいえ一方で、何が必要であるかは勉強してみなければ分からないものなので、読者が必要な知識を全て持っているということも、ほとんど起こりえないことでしょう。

つまり、そうなると必然的に「いくつもの良い資料を漁って必要な知識を補充しながら学ぶ」ことになりますが、それをするためにはまずは良い資料の存在自体を知らねばなりません。
そこで、私が参考にしている、または参考にできたと感じた資料を紹介していきたいと思います。
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0. Set theory (1980) / Kunen

先ほども触れたのですが、これは言うまでもないというか、必須というか。
私はしばしばこの本の内容を当然のように引用しますので、一応は改めて言及しておきます。
集合論の入門書として呼び声の高い名著。
私は「物を数える数は1から派」ですが、今回紹介する本質的な参考資料というわけではないので0番目としました。


1. Proper forcing / Uri Abraham


Handbook of Set Theory の中の一章です。私はこの資料をベースに proper forcing を学んでおります。
この資料は良い資料であると先生方が仰っておられたのですが、それは先ほども触れたように「入門書として使える」ということを意味しません。それどころか、Introduction では証明無しに触れられている事実が非常にたくさん出てきます。そしてそれらの証明も決して自明というわけではありません。そのあたりの証明をしっかりやりたい人にはそこが最初の壁として立ちはだかります。

また、初歩的な注意として、この資料では forcing notion の順序が一般的なものとは逆になっています。これは Shelah 等が使っている流儀で、強い condition を大きい方と見なしているので注意です。

Introductionを勉強するなら是非とも Kunen 本の VII 章演習問題[C7], [D3], [D4], [D5]を見ておいてください。
Kunen 本訳者である藤田先生による演習問題の解答集作成プロジェクト
http://tenasaku.com/academia/answers/ (みなさんも参加しませんか? これ。)
に当該問題の解答がありますので、上手に活用させてもらいましょう。

[C7]は一見関係なさそうですが、実は projection の定義に大いに関係があります。
[C7]にはA-包という概念がでてきますが、これは stronger version の projection の性質を満たします。また、c \leq h(b) が成り立つとき、h(i(c) \wedge b) = c が成り立ちます。
stronger projection の定義に出てくる c + b はこの文脈では i(c) \wedge b のことに他ならず、A が B に最初から完備包含されていれば + は \wedge に完全に対応していることになるわけです。
(おそらく + はそれを踏まえた上で定義された記号でしょう。\wedge だから × のほうが対応してそうなのですが、ブール代数と逆順序になっていることまで踏まえているものだと思われます。)


長くなったので今回はここまで。他の資料は次回以降に。

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